この記事は
一級建築士試験を合格するために
知っておく必要がある課題文のとらえ方と
過去の試験の合否結果を考察したうえで感じた
“何を優先させて、何を犠牲にするか”
の判断基準になる採点ポイントを考察しております。
私が書いている製図試験の記事の中でも、一番重要な
製図試験自体の考え方や優先事項を考察している
記事になっています。
記事の要約
- 採点は減点方式なので課題文に書いていない余計なことは控える
- 課題文はややこしいお施主様のよう。逆らえば不合格一直線
- 試験の合否の肝は全体構成、ゾーニング、動線である【森】。まずは【森】を満足させないと個室【木】を全て解ききっても不合格になる。
- 【森】が解けていれば、【木】のいくつかが解けていなくても合格になる可能性は残されている。
令和1年の試験からは上記に加えて
- 法令遵守を含め【現実に建ち得る計画ができているか?】
に重きが置かれています。
さらに令和3年は集合住宅ということもあり、
居室の採光計算にも気を付けなければいけません!
これは標準解答例から考察した内容です。
令和2年(2020年)も大切なポイントに
なると思います。
詳しくはコチラの記事をご覧ください。
「課題文で頼んでいないものは必要ない」という試験|一級建築士製図試験
この試験は
課題文の要求事項に違反している度に減点され、
最後まで土俵に残っていた人が合格できます。
つまり
課題文の要求を忠実に、そして卒なく答えていれば、
あとは作図の方でミスが無ければ合格できるわけです。
しかし中には
課題文に要求されていない場所の
眺望やサービス部門の居心地、
さらには周辺環境の裏設定など
勝手に想像し試験を難しくして
答えようとする人がいます。
残念なことに
自分で課題を追加したことで
素晴らしいプランになっていても
加点されることはありません。
加点方式の試験ではないのですから。
しかもその裏設定が違っていると
一気に不合格のリスクが高まります。
課題文は頑固で自分の意見を曲げない施主様のようなもの
私は普段注文住宅の設計の仕事をしているのですが、
製図試験を勉強しているうちにふと思ったのが、
課題文の要求事項に対応していく事と
施主様の要望に善処する事は同じこと
だなぁと思いました。
試験課題に書いている要求事項は施主様の要望なわけです。
しかもかなり自分の意見を通してくるタイプ。
このようなタイプの方は
「私が言ったとおりにしてもらえばそれでいい、
余計なことはしないで欲しい。」
と言ってきます。
お風呂が2階に欲しいと言われれば
お風呂は2階に設けなければなりません。
「こちらの方が私はいいと思うので1階に設けました」
では、たとえプランが劇的に良くなっていても不合格です。
ところがなぜかそういった要求事項を
おろそかにして不合格になる人がいます。
課題の要求事項を守らない=不合格という現実
私は製図のウラ指導のユーザープランニングというものに参加していました。
ユーザープランニングとは
その年の受験者が自身の再現図を描き上げて
ウラ指導さんに送ることで、
他の参加者全てのプランと合否結果を
無料で全て見ることができるという素晴らしい企画です。
平成29年度の試験の再現図を30案以上目を通しましたところ
不合格者に共通するポイントがありました。
平成29年度の試験の不合格ポイント
- 宿泊部門が3フロアに分散されている案【ゾーニングが悪い】
- 宿泊部門の全ての客室は各峰や眺望に配慮すると問題に明記されているのにできていない案(1か所でも北側の樹林に向けている)=【北にある樹林の眺望が良さそうだという裏設定を自分で作り自爆。】
- エントランスホールに吹き抜けや上部光庭などから採光や通風をとるなどパッシブデザインを取り入れてない案【課題要求に書かれているパッシブデザインの取込み方が不十分】
上記に該当されていた方はみなさん漏れなくランク2以下になっていました。
30案も見ていると細かな答案内容はどうでもよくなって、
上記のポイントに絞って目を通すことになるのですが、
そうなると1案1分以内に不合格であることの判断ができ、
100%当てることができました。
課題の要求事項からはずれたことをすると、
たとえそのプランがどれくらい良くなってようが、
不合格になるというのが現実です。
プランニングで優先させるべきは【木】(個室)よりも【森】(全体)
一級建築士製図試験で合格をつかみとれる方の条件を
エスキスの部分と作図の部分で分けて
私なりに考察すると以下の通りとなります。
試験合格の絶対条件
- エスキス|空間構成やゾーニング、動線などの【全体構成=森】がまず解決されていて、かつ重要な部屋【部分=2~3本の木】の要求条件を満たしていること
- 作図|チェック時間をしっかり確保し、ミスをできるだけ多く回収すること
- 関係法令を遵守していること
私がやらかした平成28年度の試験結果から採点の重点項目を考える
これは私自身が経験したことなのですが、
平成28年度の製図試験でランク2になりました。
各居室の要求事項を全てみたしていて、
ゾーニングもまとまっていて
かつ利用者とサービスの動線もきっちり分離できていたのです。
ですが私は
吹き抜けのある大きな空間を3階建ての3階にもってきていたのです。
そして他の低い高さの部分とのズレにハイサイドライトを設け、
明るさとともに排気のことも考えたパッシブデザインの計画としました。
利用者が3階にいくまでの動線は
他とは分離し、使い勝手は悪くないようにしていたので
平面図でみているときには良くできたと思っていました。
ところが課題文をあらためて見ていて、
「これかっ・・・」
と気づきました。
この年の計画にあたっての留意事項の中、
構造についての記述の中で
“「経済性」にも十分配慮する。”
とあり私はそこに抵触していたのだと思います。
建物が断面的に凸凹していると
経済的であるとはいえませんからね。
案の定、ランク1で合格している方で
こんなプランニングをしている人は一人もいませんでしたし、
試験元が出している標準解答例にも
そのようなプランはありませんでした。
ちなみに2階にこの居室を設けていた人は合格しています。
以上の事から
個室の要求事項が満たされていても
全体の構成が悪ければ不合格になると考えられます。
何かを犠牲にしなければいけない時も【森】を優先させる
試験課題は
必ず簡単に納めさせない工夫がしてあります。
そんな時には迷わず、
全体構成やゾーニングなどの【森】部分を優先させてください。
そして犠牲にする順番は
空間を犠牲にする順番
- サービス空間
- 利用者空間(トイレ)
- 利用者空間(一般の居室)
- 利用者空間(重要な居室)≒妥協してはいけない
- 全体構成=妥協してはいけない
です。
【森】さえクリアしていれば生き残る可能性があります!
さきほど
“課題の要求事項を満たしていないと不合格になります”
とお伝えしましたが、
実は割と大きなミスを犯していても
生き残り合格をしている人もいます。
平成29年度の試験で
- 屋外施設のリラクセーションスペースとトレーニングルーム+大浴場は動線について特に配慮せよとされていたのに、特に専用動線があるわけでもなく、それぞれ地下1Fと2Fに完全にわかれていた案
- 設備スペースの電気室や機械室の設えを一切記入していなかった(私です)
1階のPSを一つしか描いていなかった(私です)- 階段の矢印が上下階で不整合
といったミスは生き残りました。
※2019/12/19追記
2019年の製図試験結果の採点ポイントで
『PS,EPS,DS』の記載が無いものは
重大な違反に該当するように変わりました。
程度問題ではあると思いますが、
全くの無記載というのは今後一発アウト
になる恐れがありますので十分注意ください。
平成29年度試験はエントランスと宿泊部門が重要な【木】で、
この2つが満足できていて【全体構成=森】
ができていれば多少の減点はあったにせよ合格できたと考えています。
以上で終わりです。
全てを満足させることができなさそうな場合は必ず全体構成を優先!
と決めておいてください。
コメント
コメント一覧 (8件)
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