課題文を読み間違えていれば、
その後のエスキスが
どれだけ優れていても
卒のない製図ができていても
不合格になります。
なぜならこの試験は
課題文に書かれている要求を
どのように満足させるかで合否が決まっている
からです。
特にこれまで、
- 課題文の重要語句の読み飛ばしをしてしまうことがよくある
- いくら読んでも頭に入ってこなくて何度も読み返している
こんな経験があり、
試験や練習課題で苦い思いをした方には
特に参考になると思います。
製図試験で課題文の読み取りは最重要事項!
課題文の読み取り(インプット)の重要性
一級建築士製図試験の流れは大きく分けて
- 課題文を読む(インプット)
- エスキスをする(アウトプット)
- 製図をする(アウトプット)
この3つで構成されています。
なかでも課題文を読むというパートは重要です。
正しくインプットができていないのに、
正しいアウトプットができるわけがありません。
課題文の読み取りでよくあるミスや無駄
課題文の読み取りでよくあるミスや
無駄は以下のようなものです。
(私は色々やらかしました。)
- プランニング上重要な語句の読み飛ばしをする
- 文章の内容が頭に入らず何度も読み直してしまう
- 文章を読むのに力が入り、精神的に疲労する
- 課題文の中に出てくる語句の重要性を読み誤る
私は制限時間に焦るあまり、
課題文の読み取りをおろそかにして
上記のようなミスをしたことが結構ありました。
心当たりのある方も多いのではないでしょうか。
この中で
“語句の重要性の読み誤り”について
私の苦い経験を元に補足説明をさせていただきます。
H27年製図試験で抽象的な語句の重要性を読み誤ってプランの方向性を間違う
課題文に書かれている
語句を過小評価したり、
逆に過大評価をしてしまうことで
プランを大きく崩してしまう
というミスをした経験はありますか?
私の場合は
“抽象的な語句”に
過剰に反応してしまった経験があります。
H27年製図試験時の事です。
本文一番上にこのような文言が書いてありました。
“レストラン及びギャラリーについては、
商店街との連続性を配慮するとともに、
エントランスホールからの動線を
考慮した計画とする。”
緊張の中、
要求室の表の上の方に出てきた
この文言を見た私は、
「商店街との連続性の配慮?
連続性を持たせるには、
計画建物をだいたい商店街の
壁面ラインに揃えて
東側を広めにあけてそこに広場
を作ったらいいな~、
その広場からアクセスできる位置に
レストランとギャラリーを設けて
出入口をつくってアクセス
できるようにしよう。」
という考えに至り
建物をできるだけ西に寄せ、
建物の東西方向を縮めるべく
L字型のプランを作るようにして
東側に大きな広場を設けたプランにしました。
結果、
敷地東側にだだっ広い広場を持つ
プランニングは
ユープラを見ても誰もいませんでしたし、
当たり前ですが不合格でした。
後で冷静に考えれば、
たかだか
“レストラン、ギャラリーと商店街との連続性”
という文言のために建物全体の構成まで
変える必要は無かったと思います。
(I型で建物をまとめていれば合格に近づいていた)
また、
“レストラン及びギャラリーの商店街との連続性”
という文言の重要性についても
読み誤っていました。
標準解答例の一つを見ると、
レストラン、ギャラリーとも
商店街から連続する敷地東側からの
直接の出入り口が設けられていない
ものがありました。
(東側のサブエントランスを通して
アクセスできるようにはなっていましたが)
私はこの時”連続性”という言葉に
過大に反応しすぎたのだと気づいたのです。
課題文の読み方で工夫したポイント
これらのミスを無くすように
次のような対策をしました。
- 課題内容が把握しやすい順番で課題文を読んでいく
- 毎年重要なことが書いている箇所を把握する(毎年同じ事が書いてある部分はさらっと読む)
- 抽象的な文言は頭の片隅に残す程度にして、次に具体的要望が来るものとして読む
- いつもと違う記述方法になっているところは特に注意をする
- マーカー線の色に意味を持たせる
これらを意識する事で以下のような変化がありました。
重要な語句の読み飛ばしをする→読み飛ばしが少なくなる文章の内容が頭に入らず何度も読み直してしまう→内容が頭に定着しやすくなる文章を読むのに力が入り、精神的に疲労する→メリハリをつけて読むため楽になる
課題内容が把握しやすい順番で読んでいく
課題文は左から右、
上から下へと順番に読んでいては
課題の内容の理解がしにくい
です。
課題内容を把握するには
外部環境の話から個別の要求室の話へ、
抽象的な話から具体的な話へと
読み進めることが重要です。
それからは私も課題文の流れを意識して
自分が把握しやすい順番に変更し
読んでいくようにしました。
たとえばH30年の課題文では
下記のような感じになります。
試験の問題用紙は無断転載や複製が
禁止されていますので、
なんとなくわかる程度で
私が作成しなおしています。
詳しくは実際の課題文を入手してご覧ください。
課題文の読み取り順
1設計条件主文
2敷地及び周辺条件&敷地図
3建築条件
4留意事項
5屋外施設
6要求室表内一番上
7要求室表内主文
8要求室表内一番下
9計画の要点等
10、11要求図書
12面積表
13防火設備等の凡例
このような流れになります。
毎年重要なことが書いている箇所を把握する(毎年同じ事が書いてある部分はさらっと読む)
1設計条件主文
「どこそこにこういうものを建てる予定です。
計画の建物はこのような施設にしたいです。
計画ではこういった点に気を付けてほしいです。」
という求められる建物の要求の概略が書かれています。
このパートを見て計画の概要をおぼろげに把握
するようにしています。
H30では
「戸建て住宅を中心とした市街地にある」
「パッシブデザインを取り入れる」「
周辺の他施設と一体的に利用」
というところを念頭において
後のパートを読んでいくという感じでしょうか。
重要度について
「この部分に書かれていることは特に大切!」と
深く読み込むように勧める方もおられますが、
私はそこまで重要視していませんでした。
抽象的な話が多く、
ここをどれだけ読み込んでも
プランには結び付かないと思っています。
逆に
ここで出てくる抽象的な言葉に
惑わされないようにしましょう。
もし試験元が本当に要求するなら
抽象的な言葉を具体的な要望にして
この後のパートで書いていると考えられるからです。
2敷地及び周辺条件&敷地図
「敷地や周辺環境はこのような条件や状況です。
建蔽率(容積率)は○○%です。
それと地盤はこのような状態です。」
という話が書かれています。
特に注意して読む部分は
建ぺい率、用途地域、(今年度以降は)防火地域
は必ず把握しなければならない部分で、
他その課題ごとで地盤の状況など
いつもと違う記載があったときは要注意です。
また
敷地図は接道状況、周辺環境、高低差、方位
など様々な情報が書かれています。
設計の手がかりにするため
ビルや公園や森林など周辺環境を確認します。
ただし基本は
明文化されたものを信じるようにしてください。
H29では
北側に広がる樹林は眺望が良い
とはどこにも書いていないのに、
(問題文中に
(南や南東の)名峰や湖の眺望に配慮する。
と書いてあるにも関わらず)
客室を北側に設けた方が少なくありませんでした。
北側に設けた方は不合格です。
そしてH30でいうと
南の公園や西の桜並木、北の駐車場
のイメージを見てもその時点では
勝手に膨らませないようにしましょう。
結果、どれも有効に利用できましたが、
課題文を読み進めていくうちに
実は全然利用できない周辺環境
だったということもあります。
H29の合否を分けたポイント
についてはコチラの記事で、
https://halu-ie.com/way-of-thinking-for-pass-the-test/
H30の合否ポイントはコチラの記事で
それぞれ解説しています。
3建築条件
「建ててほしい構造や階数はこれです。
床面積の上限と下限は○○です。
外部のスペースの中で床面積に
算入されるのはこういうスペースです。」
いつも同じことが書かれています。
注意して読む部分は
許容される床面積の範囲と
床面積の算定方法についての記載です。
面積超過は一発アウトなので、
特に床面積の算定方法は要注意です。
4留意事項
「建物の計画で特に次のような
要望がありますので注意してください。
建築計画は○○に、
構造計画は○○に、
設備計画は○○に
配慮してください。」
設計条件主文の抽象的な要望に対応した
各計画の具体的な要望が書かれています。
そのため個人的に特に注意して読むのがこの部分です。
プランが行き詰まりそうなとき、
プランがある程度すすんだあとで
読み返しながら進めます。
5屋外施設
「屋外の施設はこのようなものを用意してください。」
駐車場や駐輪場、車寄せなどは
建物全体の計画に大きな影響を与えます。
そのため各要求室にいく前に
読むようにしていました。
また”屋外テラス”などは
建物内の要求室との動線の
つながりが求められることが多く、
時に屋外施設の方にだけ
“動線に配慮”が書かれている場合もあります。
- 屋外施設が面積に算入されるかどうか
- 駐車場の種類や台数を過去に練習した課題を引きずって計画してしまう
ここでの見落としは不合格一直線です。
気を付けてください。
6要求室表内一番上
「部門別、あるいは建物計画全体に対する
要望はこちらです。」
H30ではエントランスについて、
H29では客室の眺望について
H28では保育所部門の定員や、
アクセス方法、上足の履き替えについて
書かれています。
過去問を解いている方ならわかると思いますが、
しれっと書いているわりには
毎度重要なことを書いてきます。
7要求室表内主文
「各部門に必要な要求室と
要求室の細かな要望はこちらです。」
近年は要求室の自由度が高く、
重要度が判別しにくい課題も多いですが、
マーカーの色などを工夫すれば、
それだけで理解しやすくなります。
注意すべき点は、
多機能トイレ、リネン室、洗濯室など
目立たないのに忘れると一発アウトになってしまう
要求室を見落とさないようにすることです。
8要求室表内一番下
「そうそう、通用口や倉庫なども
忘れないように注意してください。」
先ほどの注意事項と同じです。
なければ要求室の欠落に該当
しますので未記入に注意してください。
特に従業員の通用口の名称未記入、
または”従業員等の出入り口”
という名称で求められたこともありました。
名称は必ず一致させましょう。
9計画の要点等
建物全体や要求室に関わる
「建築計画・構造計画・設備計画で
配慮したことを教えてください。」
要求室を一通り見たすぐ後で、
つながりのあるこのパートを
読み始めると内容の把握がスムーズです。
近年書かせる内容に幅が広がり、
画一的な解答が難しくなっています。
私は計画の要点をみた段階で、
プランに反映させる必要があるものと、
必要のないものにざっくりと分別しています。
10、11要求図書、要求図面
「図面には次のようなものを
指示通りに記入してください。
断面図はこの部分を切ってください。
またこだわった部分を
文章や矢印で表現してください。」
いつも似たような表現ですが、
いつもと違う部分が無いか注意して読み進めてください。
最近で言うと出入口の▽や
屋上の電気設備スペースの表記
がそれにあたります。
また断面図は全体の構成が把握
できるように切断することがほとんどですが、
課題文による切断位置の指定で、
間接的にプランニングがある程度固められることもあります。
例えば
“エントランスの吹抜けを含んだ部分”と指定され、
該当部分を切断しても
建物全体の断面構成が確認できない
プランになっている場合は
切断箇所に頭を悩ませる事になります。
12面積表
「面積表には所定の面積を記入してください。」
たいてい同じことが書かれていますが
一応目を通しておいてください。
H22では
“「設備機械室の床面積の合計」の
「建築物の床面積の合計」
に対する割合を記入する.”
ことが求められています。
13防火設備等の凡例
ここ数年は必須項目に変わりました。
凡例は練習中と異なっていないか、
注意して確認しておきましょう。
一級建築士製図試験の合格に
役立つ記事を色々と書いていきました。
お役にたてる内容だと思っておりますので、
是非ご覧ください!
コメント
コメント一覧 (2件)
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