先日、
新築住宅を建てた一般生活者が答えている、
とある住宅アンケート結果を見ていたのですが、
家の温かさ=床暖房
となっていて「なんだかなぁ」と
思いました。
今回は家の温かさについての記事を書きたいと思います。
家の温かさは床暖房などの設備ではなく家の断熱性能で叶えましょう
Contents
そのアンケートにはこのような文言が書いてありました。
- “戸建て住宅は寒いイメージなので床暖房を取り入れた”
- “床暖房をダイニングにしか入れておらず、リビングが寒いので他も床暖房にすればよかった”
実はこのアンケートに限らず、
新築住宅の住まい手の大半が後悔するのが
“家の寒さ”なんです。

確かに家の寒さは問題なんですが、
なにより
『家の寒さは
床暖房という設備
でしか解決できない』
と一般の方の多くが考えている
ところが深刻だと思いました。
例えば先の文言の中で、
“戸建て住宅が寒いイメージ”
(というところから既に違和感を感じますが、)
といって”設備だけ”入れるというのは
ちょっと違うんじゃないでしょうか?
寒いなら家の断熱・気密性能を上げるのが先決
ではないですか?
というのが住宅設計者としての私の意見です。
床暖房をLDK全面入れたら
60~70万円くらい普通にかかりますし、
ヒートショックがおこりそうな水回り空間にも、
となったら100万円以上必要になります。
それだけの費用があれば、
建物全体の断熱性能をぐっと上げる
ことができますよね。
そうすれば
「足の裏が温かい~」
というのは難しいですが、
「足元が寒い!」「体が温もらない!」
という不満はぐっと少なくなります。
しかも全ての部屋が、です。
停電にも強い断熱性能、弱い暖房設備
記憶に新しい千葉の大停電ですが、
あの時はまだ暑い季節だったため、
熱中症に気を付ければまだ何とか過ごせるかもしれません。
(もちろん、それでも大変なご苦労があったことと思います。)
しかし仮に同様の出来事が冬に起きていたら、
家の中でさえ命の心配をしないといけない
事態になっていたと思います。


A邸は断熱・気密性能が高いおウチで
B邸は暖房設備に力を入れているおウチ。
普段はどちらも快適に過ごせています。
しかし、暖房設備が故障したとき又は停電が
起こったときに大きな違いが出てきます。
断熱部材に電気は必要ありませんが、
暖房器具はほとんどが電気を必要とします。
停電時や故障時は当然暖房器具が使えなくなります。
そうなると、2邸のおウチの中の室温に雲泥の差が出てきます。
A邸のように
室温が15℃でも十分寒いですが、
まだ家の中で寝ることができるでしょう。
しかし、これが10℃を下回ってくると
寒くて寝つけない、
体が冷えて就寝中にトイレに何回も行かないといけない
といった事態が考えられます。
さらに外気温が氷点下になると
朝方B邸の室温は0℃から3℃まで落ちるでしょう。
そうなると、人が日常生活できる温度ではありません。
病気になるリスクもぐっと上がってきます。
断熱の寿命は長く、暖房設備の寿命は短い
一般的に家の断熱に寿命がくるからやり替える
というのは考えにくいです。
もちろん月日が経つと内部の断熱材がズレ落ちたりして、
断熱性能が劣化するというも考えられます。
しかし、きちんと施工されていればその恐れは
それほど怖くありません。
一方、設備機器は一般的に20年前後で寿命がきます。
その都度新しい設備に交換していく必要があります。
また床暖房などで床下を通している配管に問題があった場合など、
非常に大がかりなリフォーム工事が必要になります。
このように長期的な視点でも
空調設備より断熱・気密性能の方を
まず良くすることが重要だといえます。
高性能な家×空調設備でもっと快適に!
予算が許せるのであれば、
一番いいのは、
まず断熱・気密性能を上げた上で
床暖房を取り入れるのが一番です。
この順序は守った方が良いと思います。
断熱性能が違うと、
暖房器具の効きや体感も全然変わってきます。
断熱・気密性能が低いおウチ
(一般的なハウスメーカーの普通程度)で
床暖房を入れても、
仮にダイニングならダイニングだけ温かくて、
場所をちょっと移るともう寒い。
というアンケート結果どおりになりますが、
ある程度家の断熱性能(G2レベル)や気密性能が高いと
ダイニングの床暖房の効果で
部屋全体が温まり、
リビングも温かく過ごせるようになります。
これは、エアコンを利用した場合でも一緒です。
断熱性能の低い家でエアコン暖房をかけると、
頭だけ温かくなるため、気分が悪くなりますが、
断熱・気密性能が高い家だと
エアコンから噴き出してくる温度が抑えられるので、
空気が上昇しにくく、足元付近まで暖気を届けられますし、
なにより
エアコン1台で家全体を温めることもできます。
またエアコンは暖房効率が非常に良いため、
光熱費もぐっと下がります。



断熱・気密を後で行うのは非常に難しい
リフォームで設備を入れることは比較的簡単ですが、
断熱・気密をリフォームでするのは難しく、
特に気密をリフォーム工事でとるのは至難の業です。
例えば”穴があちこちに空いた浮き輪”を想像してみてください。
どこかの穴を埋めても別の穴から空気が抜けますよね。
気密がとれていない住宅も同じなんです。
リビング周りをきっちり気密処理をしたら、
これまでは特に問題がないと感じていた隣の和室に
スースー隙間風が入るようになった、
という事例もあります。
まとめ
ロールプレイングゲームで言うと
家の断熱・気密性能が『本人の能力』ならば
空調設備は装備する『武器・防具』になります。
武器や防具が壊れたり紛失したりした時のためにも
自分自身の能力があった方が絶対に良いですよね。
まだ住宅を検討中の方は
断熱・気密性能の良い家にしましょう。
先ほどもリンクを張りましたが、
断熱や気密について気になる方は
こちらの記事をご覧ください。


